就労ビザ
就労ビザでフリーランスに
- 2024.07.16
就労ビザをとるためには、外国籍の方が日本の企業と雇用契約を結ばなければならないとイメージされている方が多いようです。 しかし、必ずしも雇用契約を結んでいなければならないわけではなく、リモート勤務等も可能となった現代では、働き方も多様化していますので、 外国人の方々の中でも、副業をしたり、フリーランスとして就労ビザを取得することも可能です。 今回は、「技術・人文知識・国際業務ビザ」という代表的な就労ビザで自営業 フリーランスに取り組むことができるかどうか、フリーランススとして働く際の注意点などをを分かりやすく解説します。
就労ビザでフリーランスになることは可能か
結論から申し上げて、就労ビザを取得して、“フリーランス”として働くことは可能です。技術・人文知識・国際業務ビザは、必ずしも雇用契約に基づく労働者である必要はなく、契約形態は問いません。
というのも、技術・人文知識・国際業務のビザは、
『本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学、その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務部又は外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動』
に対して許可されるビザと定義されています。
ここでいう、『本邦の公私の機関との契約』というは、契約形態や、契約の数も問いません。
一つの企業と雇用契約を結んで労働者として、働くことは、働き方の一例であって、これに限定されるわけではありません。
つまり、フリーランスとして、様々な企業等からの依頼を受け、様々な企業等から報酬を得ても、それ自体は、何ら問題ありません。
ただし、フリーランスである場合には、雇用契約の給与と異なり、通常の安定的な報酬が入るものとも限りませんので、様々な注意すべき点があります。
フリーランスとしての注意点
就労ビザでもフリーランスになることは可能ですが、フリーランスはもともと企業に雇用されるよりも安定性が低いため、申請で、許可を受けるのは難易度が高くなります。
また、在留資格を得た後の活動における注意点もあります。
つまり、一般的な技術・人文知識・国際業務ビザの申請要件(こちらをご覧ください)に加え、さらに注意しなければならないポイントがあるとご理解ください。
◆仕事の安定性と持続性
就労ビザを取得するには、生計を営むことができる安定した収入がなければなりません。
一般的な雇用契約の場合は、毎月一定の最低限の定められた安定的な給与が支給され、かつ労働基準法等の様々な法令により労働者の働く機会・地位も厚く保証がなされます。
簡単には企業側からの賃下げや、契約解除(つまり解雇)はされにくいものになっています。
しかし、フリーランスの場合には、通常いわゆる労働者ではありませんので、一般的には個別のクライアント・顧客と、フリーランサー間の契約内容次第で、異なってきます。
通常は、業務委託契約等を締結される場合が多いですが、この契約の内容において、契約期間中の解除できる条件、契約期間、報酬額等が、安定性に欠けるものが多いケースもあります。
そのため、フリーランスとしての仕事が安定的且つ持続可能であることを立証し、入国管理局から許可を得る必要があることを踏まえると、やはり、顧客・クライアントとフリーランサーの間の契約は、口頭によるもののみではなく、紙面で契約を交わす等をお勧めといえるでしょう。
そして、契約においても、許可を受けやすいようにしていく方法はいくつかありますので、ご紹介いたします。
1) 契約形態
一般的に、フリーランサーとクライアントとの契約には、フリーランサーに仕事量に応じた成果報酬を支払う「請負契約」パターンと、フリーランサーに時間ベースの報酬を支払う「業務委託契約・委任契約・準委任契約等」のパターンがあります。
安定性と持続可能性を考慮すると、他の要素に変更がない限り、契約形態は「業務委託契約・委任契約・準委任契約」等で、できれば月次報酬が望ましいです。
支払いが定期的に行われることで、フリーランサーも安定した収入を得ることができ、クライアントも予算管理がしやすくなります。
月次報酬は両者にとってメリットが大きいため、契約時にしっかりと条件を明記することが重要です。
2)契約期間
契約の期間は長い方が好ましいです。
安定した業務であることを証明するためには、通常1年以上の契約が望ましいです。
3)契約先の数
できるだけ多くの契約を結んでいることが望ましい。1つの契約が終了しても収入への影響が少ないため、安定性が増すだけでなく、業務の規模が拡大し、日本での滞在を正当化する上でも有利になります。
4)契約の解除事由
契約の解除は、急に一方的にクライアントから契約解除をされるようなものにはならないようご留意ください。数か月前から、契約解除の申し出を必要とする等にはしておいた方が良いでしょう。
◆税金と社会保険料の支払い
税金や社会保険料の支払いは、日本国内に長期滞在するすべての人に適用される法的義務です。
雇用主は従業員の社会保険料を支払い、給与から源泉徴収を行う一方、フリーランスはこれらの手続きを自己責任で行わなければなりません。
国民年金と国民健康保険にも自ら加入し、期限内に納付をしておく必要もあります。
また、毎年所得を申告する確定申告を行い、翌年の住民税や所得税などは、この申告に基づいて計算されるため、期限内に納付しなければなりません。
フリーランスの方は、個人事業主として、確定申告をしますので、経費化(損金)できるものを計上されるなど節税対策をされて、一般の労働者・サラリーマンに比較して、手取りの収入に比較すると、申告所得がやや低めになっているケースもあるかもしれません。
しかし、就労ビザをとるためには、安定した収入が必要ですので、過大な節税等は好ましくありません。一度就労ビザが取得できても、就労ビザの更新時に支障がでる場合もあります。
また、個人事業主・フリーランスの方は、一般の労働者・サラリーマンより安定性に欠けると認識されてしまうことも多いですので、所得は通常の技術・人文知識・国際業務で必要といわれる およそ 月収 20万円以上の収入よりも、多く必要になるとお考えください。
◆所属機関変更届
就労ビザを含む多くのビザでは、所属機関の申告が義務けられており、転職等に伴う所属機関や活動内容に変更があった場合は入国管理局に届け出る必要があります。
一般的な就労ビザの場合は、雇用先の法人が所属機関に該当しますが、
フリーランスの場合は、単一な所属機関に所属する概念はありませんので、全てのクライアントを申告する必要があります。
つまり、クライアントと契約締結・解除する毎に、届出をしなければなりません。
所属機関(つまりクライアント)がいない状態になってしまった場合、その状態が3ヶ月以上経過すると、在留資格取消事由にあたる場合もありますので、注意をしましょう。
◆従業員
事業規模が大きくなり、従業員を雇用する必要がある場合は、経営管理ビザに変更する必要があります。これは法人設立をしていない 個人事業主であっても、同様です。
まとめ
今回は、就労ビザを取得してフリーランスとして活動する方法について簡潔に説明しました。 従業員として就労ビザを申請するのと比べると、フリーランスとしての申請は確かに複雑であり、困難です。
しかしながら、仕事内容が翻訳・通訳等フリーランス向けである場合や、独立して活動して、収入を上げたいという場合には、就労ビザを取得してフリーランスとして働く選択肢もあります。
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この記事の監修者
- 柳本 良太
- 行政書士・司法書士
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。
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