入管手続き・ビザ全般
入国前結核スクリーニングが始まります!
- 2025.02.19

『結核は昔の病気』というイメージがあるかもしれませんが、実際には日本で毎年約10,000人もの方々が結核を発症しています。このような状況の下、出入国在留管理庁、外務省、厚生労働省は入国前結核スクリーニングを開始することを決定しました。結核スクリーニングは一定の外国人の方々を対象としており、日本入国前の健診、結核非発病証明書取得が義務付けられます。対象国によっては入国前健診の受付は令和7年3月から、証明書提出義務付けは令和7年6月から順次始まります。それでは、詳細を見ていきましょう。
入国前結核スクリーニングの対象者
国籍
入国前結核スクリーニング(JPETS)は、日本における結核患者数の多い国を対象としており、具体的には、
フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー
が対象国となっています。(今後、追加される可能性はあります。)
ビザの種類
かなり幅広く国籍が指定されていますが、上記の国の方々全員が対象というわけではありません。
フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマーの国籍者のうち、
『中長期在留者』及び
『特定活動告示第53号及び第54号(デジタルノマド及びその配偶者・子)』
のみが対象です。
「中長期滞在者」というのは、
在留資格をもって日本に滞在する外国人の方々のうち、
- 在留期間が3月(3ヶ月)を超えている(※3ヶ月ちょうどの場合は中長期滞在者にあたりません)
- 短期滞在ビザではない
- 外交、公用ビザではない
- その他、これらに準ずる者として法務省令で定められたものにあたらない
(入管法19条の3参照)
という方々をさします。
すなわち、3月(3ヶ月)を超える技術・人文知識・国際業務ビザ、経営管理ビザ、留学ビザ、配偶者ビザ、永住者ビザ等で日本に滞在されている方々です。
例外
フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー国籍の『中長期在留者』及び『特定活動告示第53号及び第54号(デジタルノマド及びその配偶者・子)』ビザの方々のうち、以下の方々は例外として、結核スクリーニングの対象外となります。
【例外1】
再入国許可を得ている方(みなし再入国を含む)は対象外となります。
したがって、結核スクリーニングの対象となるのは、
- 新規入国者
- 再入国許可(みなし再入国許可)を取得せずに日本を出国し、日本にまた入国する外国人
(※出国から1年以内(または在留期限が1年以内に切れる場合は在留期限まで)に再入国し、同じ活動を続ける場合はみなし再入国許可の適用があります。)
となります。
【例外2】
国籍が対象国であっても、居住国の滞在許可証等により、現在の居住地が対象国以外の国又は地域であることが確認された方は対象外となります。
【例外3】
・JETプログラム参加者
・JICA研修員(長期・短期)、JICA人材育成奨学計画(JDS)留学生
・大使館推薦による国費留学生
・外国人留学生の教育訓練の受託事業
・当該国とのEPAに基づく看護師・介護福祉士
・特定技能外国人
・家事支援外国人材受入事業(特区法第16条の4)
も対象外となります。
(特定技能を含む、これらの制度では、入国前に胸部レントゲンを含む健康診断が義務付けられているので、結核スクリーニングの対象外となっています。)
結核スクリーニングはいつから始まるのか
入国前結核スクリーニングの開始の時期は、以下の通り、国ごとに異なります。
なお、在留資格認定証明書交付申請日が下記の提出義務付け期日以降になる場合のみ、結核非発病証明書の提出が必要となります。
すなわち、入国日が提出義務付け期日以降でも、在留資格認定証明書交付申請が提出義務付け期日より前であれば、証明書提出は不要です。
フィリピン・ネパール
健診受付開始:令和7年3月24日予定
結核非発病証明書提出義務付け:令和7年6月23日予定
ベトナム
健診受付開始:令和7年5月26日予定
結核非発病証明書提出義務付け:令和7年9月1日予定
インドネシア・ミャンマー・中国
健診受付開始:調整中
結核非発病証明書提出義務付け:調整中
結核スクリーニングの流れ
① 日本政府が指定する医療機関での受診
まず指定健診医療機関で健診の予約を行います。そして、健診当日、問診、身体検査、胸部レントゲン検査を受けます。結核の疑いがある場合は、改めて喀痰検査も実施されます。
なお、指定健診医療機関が充分あるのか、予約がいっぱいでなかなか健診が受けられないということはないのか等、心配になるかと思います。この点につきましては、
「対象国から日本への入国者数の実績を基に、指定健診医療機関における健診医師が1日当たりに対応することとなる人数を推計し、実施のめどを立てています。 制度開始後も、継続的に状況を確認し、必要に応じた健診医療機関数の確保に努めます。(出入国在留管理庁からの回答より抜粋)」
とのことで、今後、順次、指定健診医療機関の指定がなされていく予定です。
② 結核非発病証明書の交付を受ける。
上記①の健診(又は喀痰検査)により、結核を発病していないことが確認された場合は、各指定健診医療機関より結核非発病証明書が交付されます。
なお、結核非発病証明書発行までの日数・費用は医療機関によって異なります。
また、結核非発病証明書の有効期間は原則として、胸部レントゲン撮影日から180日です。
③ 結核非発病証明書の提出(健診日から180日以内)
a) 日本の出入国管理庁において在留資格認定証明書交付申請を行う際に提出します。
結核非発病証明書には『胸部レントゲン撮影から180日』という有効期限がありますが、
「在留資格認定証明書交付申請時のみ、有効期限内の結核非発病証明書を提出すれば足り、その後に行う査証申請及び上陸申請については…結核非発病証明書の有効期限内に申請を行う必要や、結核非発病証明書を提出する必要はありません。(出入国在留管理庁からの回答より抜粋)」
したがって、180日以内に在留資格認定証明書交付申請のみ行えば、その後の査証発給、入国は180日を超えた後になっても構いません。
b) 在留資格認定証明書に「結核非発病証明書未提出」と記載のある方は、在外公館で査証を申請する際に提出します。
c) 在留資格認定証明書を取得せずに在外公館で査証申請をする場合等は、在外公館で査証を申請する際に提出します。
④ 査証発給・入国
査証の発給を受け、入国します。
まとめ
これまで見てきましたように、日本での結核蔓延対策として令和7年より結核スクリーニングが始まります。『ただでさえ大変なビザ申請にさらにプロセスが増えて大変だなぁ、よく分からないなぁ』と、ため息が出てしまうかもしれません。
しかしながら、同制度はもちろん日本の公衆衛生を目的とするものではありますが、申請者ご本人にとっても、日本に来てから結核感染が発覚し、日本という外国で治療を受けることになってしまえば言語や保険の問題もあり、大きな不安を感じられることと思います。結核スクリーニングは、このような事態を防ぐ対策にもなると思われますし、前向きな気持ちで受けて頂けるといいのかなぁと思います。
ただ、健診や結核非発病証明書発行のため、通常よりビザ申請に準備期間が必要となる可能性はあるでしょう。これから留学、就職等のため日本に入国される予定の方は、まずご自身が結核スクリーニングの対象かどうかを確認し、対象であれば、事前に入国までのスケジュールを確認しておかれるとよいでしょう。
また、ご自身が結核スクリーニングの制度の対象か分からない、新制度の下でのビザ申請の方法に不安があるという方は、専門家にご相談されることをお勧めします。
弊所グループは、大阪事務所(阿倍野・天王寺)と東京事務所(渋谷区・恵比寿)を拠点に活動しており、出張相談・オンライン相談もお受けしております。
永住許可申請、帰化許可申請、就労ビザ申請、留学ビザ申請、経営・管理ビザ申請など入管(出入国管理局)への手続きとそれに伴う起業にかかる様々な手続き、在留資格に関わるビザ更新の手続き等をワンストップ行っております。日本語でのご相談にご不安の方は、ベトナム・ネパール・中国・バングラデシュ・英語圏等様々な各国通訳者が在籍しておりますので、ご安心してご相談下さい。
まずは、在留資格、ビザのことでお悩みの方がいらっしゃいましたら、些細なことでも結構ですのでお気軽にお問い合わせ下さい。
参照先:
厚生労働省「入国前結核スクリーニングの実施について Japan Pre-Entry Tuberculosis Screening(JPETS)」
この記事の監修者

- 柳本 良太
- 行政書士・司法書士
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。
ビザ・帰化と在留のことは
専門家に相談するのがおすすめ

当事務所ではビザに関する各種申請・帰化申請についての無料相談(初回に限り)・お問い合わせにビザ・帰化申請の専門家が対応させていただいております。
また、英語・中国語・韓国語の各言語にも対応可能で専門知識をもっている外国人スタッフが在籍しており、各言語での相談・お問い合わせにも対応可能です。こちらからお気軽に無料相談やお問い合わせをご利用ください。