配偶者ビザ
配偶者ビザから永住権への変更の場合、申請者本人の収入は必要?
- 2025.02.18
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日本人や永住者と結婚して数年が経ち、「日本の永住権をとりたい。」と考えておられる方も多いかと思います。 永住権を取得できれば、数年ごとの更新は不要となりますし、万が一、離婚や死別した場合でもビザが切れて帰国しなければならないという事態も避けられます。 また、ローンも組みやすくなる等、日本でより安定した生活基盤を築くことができるでしょう。 しかしながら、「永住権取得したいけど、仕事してないから不安だなぁ。夫(妻)に収入があれば大丈夫なのかな?」「私はパートしかしてないけど大丈夫なのかな?」等と、ご心配の方もいらっしゃるかもしれません。そこで、今回は、在留資格「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」から永住者ビザへの変更申請をする場合、①『収入要件はあるのか?』②『ある場合、申請人個人の収入が必要なのか?それとも、世帯収入が考慮されるのか?』について見ていきたいと思います。
配偶者ビザからの永住権申請では収入が必要か?
まず、永住権取得の要件は出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」とします。)22条2項に定めがあります。
永住許可の法定要件をまとめると、
(1)素行が善良であること【素行要件】
(2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること【独立生計要件】
(3)その者の永住が日本国の利益に合すると認められること【国益適合要件】
となります。
上記の表現からも分かるように、かなり抽象的で文言だけ見てもそれが何なのか、分かりにくいですよね。そこで行政は、これらの要件の具体的判断方法につき詳細なガイドラインを定めています。
そのガイドラインでは、
日本人・永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留している方については、(1)素行要件(2)独立生計要件を免除する
ものと定めています。
(参照:「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)」)
そうすると、日本人・永住者の配偶者については「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること【独立生計要件】」が不要なのですから、
「収入は無くてもいいんだ!!」
と思われるかもしれません。
しかしながら、実務では、
(3)その者の永住が日本国の利益に合すると認められること【国益適合要件】
の中で、収入が見られることになります。
但し、通常の独立生計要件よりは緩やか、ということになります。
(ちなみに、国籍適合要件では過去の犯罪歴等がみられますので、実質的には素行の善良も確認されることになります。)
本人の収入が必要か、世帯収入でよいか
独立生計要件を見られないということは、
配偶者ビザからの永住申請の場合、本人の収入のみではなくて、夫や妻の収入は考慮されるのでしょうか?
結論から申し上げますと、申請人の配偶者である日本人、永住者の収入も考慮されるということになります。
通常の就労ビザ等を取得されている方が行う永住権申請では、原則、本人の収入のみが審査対象となりますが、ここが大きな違いです。
そもそも、収入がチェックされるのは、
・永住権を取得した後、本当に日本で末永く安定的に暮らせるのか、
・生活保護等に頼ることなく暮らしていけるか
・税金・年金等もしっかり払ってもらえるのか、
等の点を確認するためです。
すなわち、永住権というのはその名の通り、期限もなく、日本で長く生活していくためのビザですから、税金、年金等を納めながらずっと日本で安定的に暮らしていける収入、生活保護に頼らず自立した生活を送ることができるような収入がある、ということを前提として確認する必要があるのです。
この点、日本人や永住者は、通常、日本に生活基盤を有しており、日本において将来に渡って安定的に収入を得ていくという推測が働きます。
というのも、
日本の民法では、夫婦間は、互いに、「同居義務」と「扶養義務」があり、
婚姻期間中に築いた財産については、原則として「共同財産」と推定されることになっています。
今回のテーマである、「永住者や日本人の外国人配偶者」という、
国際結婚や日本に居住する外国人同士の結婚である場合には、日本の民法が適用されるかどうかは、それぞれの本国法等によりケースバイケースではあります(参考 「法の適用に関する通則法」「扶養義務の準拠法に関する法律」)が、
入管における在留資格審査においては、夫婦が「同居」しているかどうか、「扶養」の関係性が、大きく考慮されています。
夫婦間の扶養の性質から、
日本人または永住者に安定的な充分な収入や一定の財産があるのなら、たとえ申請人本人に収入がなくても、生活保護等の公的扶助を受けることもありません。
(といいますか、生活保護等の審査上、配偶者に充分な収入や、財産がある場合には、生活保護の受給はできません)
そのため、申請人の配偶者である日本人や永住者の日本での収入は安定的、継続的であると推測でき、これらを考慮に入れても問題がないと考えられます。
他方、(就労ビザからの永住申請等のケース等で)申請者の配偶者が外国人である場合は、配偶者が自国に戻る、海外転職する等、比較的、日本を去ったり、その仕事や収入が変動したりする可能性が高いと考えられます。
よって、『日本で安定的に暮らしていけるか』等の判断において、外国人配偶者の収入をカウントすることはできない、ということになってしまします。そのため、このようなケースでは、原則、独立生計要件の判断において、申請者本人の収入が必要であるということになります。(なお、例外はあります。)
収入の目安
「配偶者ビザからの変更の場合、通常の永住申請より収入は少なくてすむのか?」
と思われるかもしれませんが、目安となる金額は、通常のケースと特に変わりません。
(但し、あくまで目安ですのでご注意ください。)
既述の通り、一般的な永住では独立生計要件が必要であり、ガイドラインによると、これは
「日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。」
と説明されています。
「安定した生活」といえるために具体的にどれくらいの収入が必要なのか、ということは特に法律やガイドラインでは定められていませんが、これまでの審査結果等から、
『年収300万円程度』
が目安であると言われています。(申請者の方それぞれの状況、居住地域等により、金額は変わりえますのであくまで目安でしかありません。ご注意ください。)
また、ご家族がいらっしゃる場合は、扶養家族1人につきプラス年収80万円程度が目安となります。
配偶者ビザからの変更の場合でも、
『年収300万円程度+扶養家族1人につき年収80万円程度』
の世帯収入が目安となるということになります。
そして、それは安定していなければなりませんので、
近年では、原則として、3年以上継続してこの水準を維持していることを求める出入国在留管理庁が多くなっております。
なお、申請者自身に外国での収入がある場合については、こちらのブログをご覧ください。
まとめ
永住者ビザは、他のビザに比べ、期限も更新もなく、就労制限もない等、特殊なビザですから、その分、審査も難しくなり、なかなかハードルが高いと考える方が多いでしょう。
この点、配偶者ビザから永住ビザに変更する場合は、簡易永住といい、居住年数や収入要件の緩和がありますし、様々なメリットもあります。
これからも日本に住まれるのであれば、挑戦してみる価値はあるでしょう。
この場合、世帯収入が考慮されますので、申請人の方が主婦・主夫、パートの方である場合や、退職後や休職中でご本人は収入がないという場合でも、世帯として十分な収入があれば永住を取得できる可能性があります。
但し、収入について目安はあるものの、明確な金額が規定されておらず、それぞれの申請人の方の状況等によって判断は異なってきます。また、目安より金額が低いようなケースでは、申請人の状況を説得的に説明ができるかどうかも要になってきます。そこで、永住権の申請を考え中の方で、収入にご不安のある方は専門家にご相談されることをお勧めいたします。
この記事の監修者
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- 柳本 良太
- 行政書士・司法書士
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。
ビザ・帰化と在留のことは
専門家に相談するのがおすすめ
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