言語メニュー 言語メニュー

就労ビザ

技能実習制度から育成就労制度へ(2027年施行)

2025.06.17

2024年の閣議決定により育成就労制度の施行(2027年予定)が決まり、2025年3月11日の閣議決定では、同制度の運用基本方針が定められました。育成就労制度は、「技能実習制度に代わる制度」ということですが、一体どういったものなのでしょうか。一緒に見ていきましょう!

育成就労制度導入の経緯(2027年施行予定)

まず前提として、特定技能というビザがあります。

これは、建設、農業、自動車整備等の特定産業分野で即戦力になるような外国人の方に向けたビザです。そのため、一定程度の知識等が必要とされ、原則、技能試験に合格することがビザ取得要件の1つとなっています。

他方、「まだ知識はないが、これから学びたい」という外国人の方向けに技能実習という制度があります。

この制度は、日本の技能等を外国の方に伝え、開発途上地域等の経済発展に寄与することを目的としているため、元々知識を有していることは求められません。また、技能実習から特定技能へと進むことが可能であり、技能実習2号を良好に修了した場合は、特定技能の技能試験と日本語試験が免除されます。

この技能実習制度ですが、本来の目的からはずれ、安価な労働力として悪用されたり、ハラスメントが行われる等、人権面から問題視される事象が頻発しました。このような理由から、技能実習制度は2027年に廃止されることとなり、代わりに導入されることとなったのが育成就労制度です(2024年の閣議決定により導入決定)。

育成就労制度の概要

まずは、育成就労の在留資格を取得するためにはどのような要件があるのか、受入機関の義務はどのようなものか等、以下で見ていきましょう。

育成就労外国人に関する基本事項

以下の通り、就労開始時には技能は求められませんし、求められる日本語能力も日本語参照枠A1相当(小学校1年生から3年生程度・日本語能力試験でN5レベル)と高くないものとなっています。

他方、3年間の育成就労の就労・在留期間終了時には、技能・日本語能力共に、いずれも一定のレベルであることが求められます。

項目

詳細

求められる

技能水準技能水準

就労開始前:無し

終了時点:特定技能1号水準

※試験により確認。試験は分野別運用方針において定められます(上乗せ可能)。

求められる

日本語能力水準

就労開始前:日本語教育の参照枠A1(日本語能力試験 N5相当)(相当講習でも可)

終了時点:日本語教育の参照枠A2相当(日本語能力試験 N4相当)

※試験により確認。試験は分野別運用方針において定められます(上乗せ可能)。

※育成就労産業分野ごとに、より高い水準とすることも可能とされる予定。

在留期間

原則3年

※試験に不合格になった場合、一定の要件のもと、最長1年の在留継続が認められます。

※技能実習を行った期間は育成就労を行った期間とみなされ、2年以上の技能実習を行ったことがある場合は育成就労制度で働くことは原則不可。

家族の帯同

基本的に不可

雇用形態

原則フルタイム、直接雇用

※密接関係法人育成就労(密接な関係を有する複数の法人が共同して行わせる育成就労。育成就労法8条の2第4項参照)の場合のみ、複数の育成就労実施者との雇用関係が可能。

※季節性のある分野(農業等)では、一定の手続きを行えば派遣も可能。

特定技能1号への

移行要件

技能試験・日本語試験合格に加え、受入れ機関における就労期間が一定の期間を超えている場合に限られる予定。

受入側に関する基本事項

技能実習でのハラスメントの横行等、反省点の改善、そして外国人にとって魅力あるキャリアアップ手段としての制度作りのため、報酬の確保、就労計画の作成及び実行、生活環境の整備等、受入側には様々な義務が課されています。

項目

詳細

育成就労

実施者の

義務

・育成就労計画の作成。

・育成就労期間の終期まで育成就労を行わせる。(外国人の意思に反して期間途中で帰国させることはできない。)

・目標とする技能及び日本語能力の試験を受験させる。

・育成就労制度が適性に運用されることを確保し、環境を整備する。

・同等の業務に従事する日本人と同等額以上の報酬の支払いを担保する。

・就労期間に応じた昇給、待遇向上を行う。

住環境の確保、食生活、医療等についての助言体制の整備を行う。

・転籍制限期間が1年を超える場合:就労開始から1年経過後に、転籍の制限を理由とした昇給その他待遇の向上等を図らなければならない。

転籍制限

期間

(同一事業所等での

勤務を継続する期間)

1~2年。

※1年とすることを目指しつつ、当分の間、分野ごとに1~2年で設定。

 

受入方法

①     単独型育成就労:外国の支店や子会社の社員等を受け入れ、3年の就労を通じた人材育成を行う。監理支援を受けない。

②     監理型育成就労:監理支援機関が関与(育成就労外国人と育成就労実施者の雇用斡旋、育成就労計画の適正実施の監理を行う)

 

※取引先企業の社員等の受入れは、「監理型育成就労」。

育成就労制度と特定技能制度との違い

ここまで育成就労制度の概要を見てきましたが、技能実習からどのように変わったのでしょうか。技能実習の反省を活かし、どのように改善がなされたのでしょうか。

制度目的

まず、技能実習の目的は、母国の発展のため、日本の技術を移転するという人材育成でした。しかし、実際の現場では人手不足が深刻であり、適切な人材育成を行わず、労働力として悪用するというケースが頻発しました。

そこで、育成就労制度の制度目的は、人材の育成、②人材の確保とされ、人材を育て、かつ人材を確保するという、人材不足という現実に即した目的となりました。

具体的には、

人材の育成特定技能1号(相当程度の知識又は経験を必要とする技能)の水準を有する人材の育成

・②人材の確保特定産業分野のうち、3年間の就労(在留期間は原則3年)を通じて習得させることが相当である分野における人材の確保(日本法令上、免許・資格が必要とされる分野は対象としない。)

です。

転籍

また、大きな違いとして、所属先企業等の転籍が可能となる点です。

技能実習では、在留の目的が「就労」ではなく、あくまでも「実習」であるため、そもそも転職という概念が存在しません。

所属先の企業の都合による場合や、技能実習2号から3号への移行のタイミング、その他、人権侵害等、差し迫った状況があるような場合にのみ、限定的に転籍が許されています。

そのため、実習する外国人自身が、所属先企業と合わず、転籍したくても、原則として転籍ができないため、多くの逃亡者が出てしまい、オーバーステイといった不法滞在者が出てしまったことも、大きな社会問題となりました。

(技能実習につきましては、こちらの記事をご覧ください。https://immigration-lawyer.co.jp/visa/skill/

これに対し、育成就労制度では、こういった不法逃亡者を出さないためにも、より緩やかに転籍が認められることとなりました。

但し、人材育成の観点からは、同一の育成就労実施者の下で継続的に勤務することが効果的であると考えられますので、完全に転籍自由というわけではありません。

以下の場合に限って転籍が許されます。

  • パワハラや暴力などの人権侵害を受けた場合等「やむを得ない事情」がある場合
  • 本人の意向があり、以下の要件を満たす場合

(1)転籍先の育成就労実施者の下で従事する業務が転籍元の育成就労実施者の下で従事していた業務と同一の業務区分であること

(2)転籍元の育成就労実施者の下で業務に従事していた期間が、育成就労産業分野ごとに1年以上2年以下の範囲内で定められる所定の期間を超えていること

(3)育成就労外国人の技能及び日本語能力が一定水準以上であること

(4)転籍先の育成就労実施者が適切と認められる一定の要件に適合していること

等。

また、スムーズな転籍のため、以下の内容が定められています。

・育成就労実施者は、転籍への不当な制限や転籍申し出を原因とする解雇等をしてはならない。

・転籍支援は監理支援機関が中心となって行う。

・外国人育成就労機構、ハローワークも連携して転籍先の情報の収集、提供などの支援を行う。

参照先:

育成就労制度・特定技能制度Q&A

令和7年3月11日閣議決定

在留期間

技能実習では1号から3号まで移行した場合、在留期間は合計最長5年とされています。その後、特定技能に進んでいけば、さらに5年の滞在が可能です。

これに対し、育成就労では最長3年(例外的に1年延長可能)とされています。

育成就労外国人は、原則この3年間の間に、日本語や専門性を習得し、特定技能1号レベルに達することが求められるため、技能実習よりより短期間での人材育成が可能となります。

受入れ対象分野

技能実習では、農業、建設等、91職種168作業(令和7年3月7日時点)が対象となっています。

これに対し、育成就労制度には特定技能の前段階として人材を育成する役割があるため、その対象分野は特定技能の対象分野(特定産業分野、16分野)と重なります。但し、16分野全てが対象となるのではなく、3年間での習得が相当な分野に限定されることとなっています(施行日までに決定予定)。

なお、16の特定産業分野は以下の通りです。育成就労制度では、ここから限定されていくことになります。

介護

ビルクリーニング

工業製品製造業

建設

造船・舶用工業

自動車整備

航空

宿泊

自動車運送業

鉄道

農業

漁業

飲食料品製造業

外食業

林業

木材産業

なお、育成就労制度の人材育成という目的から、複数の分野をまたいで働くことは許されていません。

(特定産業分野についてはこちらのブログをご参照ください)

まとめ

これまで見てきました通り、育成就労制度は人材育成、人材確保を目的としているため、就労開始時に技能を有することは求められません。また、学歴要件もありません。そのため、OJTを通して日本でスキルを獲得したいという方にとってはご検討される価値のある制度ということが言えるでしょう。

しかし、ご興味はあっても、要件を満たすのか、技能実習のように問題点が噴出するのではないか等、ご不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。2027年から始まる新しい制度であり、前例の積み重ねもなく不明点も多いと思います。ビザ取得にご興味をお持ちの外国人の方、受入側としてご興味をお持ちの会社様は弊社までお気軽にご相談ください。

弊所グループは、大阪事務所(阿倍野・天王寺)と東京事務所(渋谷区・恵比寿)を拠点に活動しており、出張相談・オンライン相談もお受けしております。

永住許可申請、帰化許可申請、就労ビザ申請、留学ビザ申請、経営・管理ビザ申請など入管(出入国管理局)への手続きとそれに伴う起業にかかる様々な手続き、在留資格に関わるビザ更新の手続き等をワンストップ行っております。日本語でのご相談にご不安の方は、ベトナム・ネパール・中国・バングラデシュ・英語圏等様々な各国通訳者が在籍しておりますので、ご安心してご相談下さい。

まずは、在留資格、ビザのことでお悩みの方がいらっしゃいましたら、些細なことでも結構ですのでお気軽にお問い合わせ下さい。

 

 

この記事の監修者

柳本 良太
柳本 良太
行政書士・司法書士
行政書士法人やなぎグループ代表社員。
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。

ビザ・帰化と在留のことは
専門家に相談するのがおすすめ

ビザ・帰化と在留

当事務所ではビザに関する各種申請・帰化申請についての無料相談(初回に限り)・お問い合わせにビザ・帰化申請の専門家が対応させていただいております。
また、英語・中国語・韓国語の各言語にも対応可能で専門知識をもっている外国人スタッフが在籍しており、各言語での相談・お問い合わせにも対応可能です。こちらからお気軽に無料相談やお問い合わせをご利用ください。

関連記事

関連記事

無料相談予約する お問い合わせする