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経営・管理ビザ

会社が赤字の場合にも経営管理のビザが更新できる?

2024.05.16

経営管理ビザは、会社が赤字の場合、ビザが更新できない?と不安をお持ちの方が多いでしょう。 結論から言うと、赤字であってもビザを更新できる場合はありますので、 あきらめてはいけません! しかし、在留資格「経営・管理」の名称からもお察しのとおり、 このビザは基本的に、日本で継続的に事業の経営または事業の管理を行うためのビザです。 赤字の程度や継続期間にもよりますが、事業が継続的に行えないと判断される場合は更新許可申請が不許可になるという理屈になります。 ここで言う赤字の程度と継続期間とはどの程度か、 どのようなケースなら更新が可能で、どういう状況下の更新が危ういか。 今回は、状況ごとに細かく解説していきます。

事業の継続経営が認められるケース

ー前提ー

まず、赤字の状況における基本的な判断基準をお話しします。

事業活動を行う中では、諸般の事情や要因で『赤字決算』となり得ます。

今後、事業活動が継続不可能なケースもあれば、

安定企業が諸般の事情で一時的に赤字に転じるものの企業の継続には問題がない等、 在留活動の継続性に支障がないケースもあります。

そのため、事業の継続性については、「単期(一事業年度)の決算状況ですべてを判断するのではなく、直近二期の決算を元に、貸借状況等も含む総合的判断になる。」というのが基本的なスタンスとなります。

つまり、赤字の場合の事業の継続性は、直近2期の「損益計算書(PL)」と「貸借対照表(BS)」から、判断することになります。

では、次は赤字でも事業の継続経営が認められるケースを説明していきます。

第一期目の新設会社であるケース

創業してからの最初の事業年度 つまり第一期目が赤字の場合であれば、基本的に売上総利益があるなら、債務超過していない限りは、経営管理ビザの更新が認められるケースは多くあります。なぜなら創業初期の新設企業であれば、すぐに利益(経常利益)でないからといって、事業の継続性がないとはいえないからです。開業当初は、設備投資に係る費用も多額になります。

スターアップの段階で最初から利益(経常利益)を出せる企業はほんの一握りで、特に、新しいビジネスモデルや、独自性の高い商品等を持つ企業は当初は赤字のこともあるでしょう。

よって新設会社において、売上総利益がない、重度な債務超過がある、当初ビザを取得したときとは異なる不適切な事業所に移転しており、役員報酬を極端に減額している、等よっぽどな事情がない限りは、今後の事業計画で経常利益が出せることの説明しておけば、経営管理ビザの更新が認められる可能性が高いと言えます。

新興企業(設立5年以内の国内非上場企業)のケース

出入国在留管理庁では、設立から5年以内の国内非上場企業をその他の企業と分けて、考えられています。この「新興企業」には前述の新設会社も当然含まれます。

新設会社(1期目の会社)ほどではありませんが、

新興企業では、独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデル等に基づき事業を成長させようとする場合には、設立当初は赤字が続くことも想定されます。

先ほどと同じく、一定の例外を除けば、今後の事業計画で経常利益が出せることの説明しておけば、経営管理ビザの更新が認められる可能性は十分に高いと言えます。

単期の決算赤字

赤字の状況下で事業の継続性の有無を判断するのは「単期の決算状況ですべてを判断するのではなく、直近二期の決算を元に貸借状況等も含む総合的判断」になります。赤字決算になったとしても一事業年度に止まるのであれば、ビザ更新が認めらる可能性は十分にあります。

赤字を招いた理由と改善の見込みについて説明については、しっかりしておく必要があります。

例えば、近年よくあるのはコロナウイルスによる需要の減少や国際情勢下のよる国際運送のコスト向上等、企業側がこういった不可抗力要素により赤字に転じた場合は理由を説明すれば、更新が許可される可能性が十分にあるでしょう。

ただし、注意してほしいのは、ご自身が経営者であることを忘れてはいけないことです。いくら不可抗力とはいえ、万が一の際の事態にも備えて、リスクヘッジしつつ、早急に新しい手を打ちながらも、企業経営をしていくというのが、本来の経営者の役目です。

来期以降黒字に転じるように施策をしなければ、来期以降の更新が難しくなることを念頭に置きましょう。

2期連続の決算赤字(債務超過なし)

2期連続赤字に転じた理由は様々で、複数の要素な交じり合って招いた結果で、

その理由が企業様の数の分だけ存在し、一概にその良し悪しを判断することは難しでしょう。しかしその一方で、会社として2年連続で利益を出せなかったことは会社の運営方針に問題が少なからず存在します。

単期赤字決算の場合は、理由書を添付するだけで物足りるケースもありますが、2期連続赤字の場合の更新許可申請は、赤字の理由を説明することはもちろん、連続赤字により経営の方向変更や改善計画を説明をきちんと説明していく必要があります。

更に、その計画は実現可能かどうかの立証も大事となります。次期の企業経営状況が黒字になる見込みがあれば、更新ができる可能性があります。

なお、2期連続赤字の場合であっても、これまでの剰余金が減少しただけで、欠損金が生じておらず、事業継続をできる十分な資産がある状況なら、事業の継続性が認められます。この場合には、同じく、改善計画等の事業計画をもって、許可は十分にされうると言えます。

単期の債務超過

※債務超過とは簡単に表すと、資産より負債が多い状態を意味します。

※貸借対照表は会社の一定時点の財務状況を示す書類の一種です。

上記右側の貸借対照表で示しているように、債務超過に陥いる会社の資本はマイナスとなっています。つまり、会社の全財産をかけても債務を弁済しきれないことを意味します。

言うまでもなく、これは、外国人の在留管理をする入管としては、このような会社の運営・経営者を放置することは、日本の国益にならない可能性も高く、非常に危ない状態ですから、在留資格更新審査では非常に厳しい判断となるでしょう。

出入国管理局が発表した『「経営・管理」の在留資格の明確化等について』では、債務超過の企業を「企業としての信用力が低下し、事業の存続が危ぶまれる状況となっていることから、事業の継続性を認めがたいもの」と評価しています。

この場合に事業継続性を認めてもらうためには、中小企業診断士や公認会計士等の1年以内に経営状況の改善及び債務超過から離脱する見通しを評価を行った書面報告を提出することを求められます。

しっかり今後の事業計画を立て直せるのであれば、在留資格の更新はまだ可能性がありますが、経営者だけの思い込みのみで作るのではなく、専門家と相談しながら実現性の高いプランを作りましょう。

 

事業の継続経営が認められない可能性の高いケース

今までは「〇〇の資料を提出できればまだビザ更新の可能性が高い」といった事例を紹介してきました。

ここからは、万全な準備をしたとしても不許可の可能性の高いパターンについてお話し致します。

2期連続の債務超過

連続の債務超過はもっとも不許可になる可能性が高いパターンだと言われています。

理由は極めて単純で、継続経営が不可能に近い状態に近づきつつあることに他ならなく、2回目の債務超過は、前年度講じた事業方針転換が失敗に終えたという訳です。

こうなれば、よっぽとの合理的理由がなければ在留資格の更新が非常に困難となります。

・合理的な理由

・中小企業診断士や公認会計士等のよる評価書類

・+αの方策

返済が不可能な負債が事業年度を重ねるたびに蓄積されていく状況の中で、今までご紹介した理由書、有資格者による評価書類を提出するだけでは物足りず、プラスアルファで別の方策を考えなければ在留資格の更新許可は下りることは、まずありません。

事業計画書、改善の見通しの評価書面はもちろんですが、一般的に考えられる方策としては経営者ご自身による増資や他企業から支援を頂くことが挙げられます。

※増資や支援を受けることはあくまでも一時的な措置であって、根本的な経営問題を解決できなければ今後も苦しみ続けます。

また、これらの処置を全部できたからと言って必ずビザが更新できる保証がありません。2期連続債務超過というのは、これぐらい厳しい状況で、最悪事業の撤退を余儀無くされることもありますので、日頃経営状況を関心を寄せながら、「もしかしたら今期も債務超過…」の段階で早めに専門家とご相談することを強くお勧めします。

直近期及び直近期前期において共に売上総利益がない場合

企業のメイン業務において、売上高が売上原価を下回る売上総利益がない場合というのは、通常の企業活動を行っているものとは認められにくいものです。

特別な事情から売上総利益がない場合があることも、もちろん想定されますが、二期連続して売上総利益がないということは、当該企業が主たる業務を継続的に行える能力を有しているとは認められません。

そのため、原則として経営管理の更新は難しくなってきます。

ただし、新興企業が独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデル等に基づき事業を成長させようとする場合には、設立当初は赤字が続くことも想定されますので、、中小企業診断士や公認会計士等の企業評価書面や資金準備の説明、営業拡大の事業計画等で更新が許可される可能性もあります。

まとめ(赤字決算におけるケース別在留資格更新要件)

基本的に、赤字決算における経営・管理ビザは以下のようになります。

審査の重要な指標・チェックポイント

 ☑新興企業かどうか

 ☑売上総利益があるか(売上高が売上原価を下回る場合か)どうか

 ☑直近期末・直前期において当期純損失となるかどうか

 ☑当期純損失となったとしても、欠損金が生じるか、剰余金が減少するだけかどうか

 ☑債務超過となるかどうか

まとめ

1期目赤字 ⇨ 債務超過でなければ、一定の説明で更新は可能

2期目赤字 ⇨ 連続赤字により経営の方向変更や改善計画を説明できれば更新可能性あり

単期債務超過 ⇨ 中小企業診断士や公認会計士等による企業評価の書面と、資金準備の説明等で、更新の可能性あり

連続債務超過⇨不許可の可能性が高くなるため、別の方策を講じる必要がある

売上総利益がない⇨事業の継続性を認められることは困難

ただし、新興企業の場合には、中小企業診断士や公認会計士等の企業評価書面や資金準備の説明、営業拡大の事業計画等で、更新の可能性あり

このように、それぞれの企業状況により、更新の可否や、更新できるための手立てが変わります。赤字決算になりそうな場合には、早めに、税務・法務・ビザの観点等総合的に解決してしていくことが大切です!

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この記事の監修者

柳本 良太
柳本 良太
行政書士・司法書士
行政書士法人やなぎグループ代表社員。
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。

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