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帰化申請

借金があっても帰化できる?

2025.01.20

借金がある場合、帰化できるかどうか不安になる方も多いかと思います。借金と一口に言っても内容は様々です。「友人や金融業者から借金した」「車や住宅のローンが残っている」「奨学金返済がある」「自営業で融資を受けた」「税金を滞納している」「クレジットカードの支払いが滞っている」「コロナ禍で社会福祉協議会の貸付制度を利用した」等、色々なケースがあるでしょう。このような場合、帰化申請に影響があるのでしょうか。

帰化とは

法務省によると、帰化とは「その国の国籍を有しない者(外国人)からの国籍の取得を希望する旨の意思表示に対して、国家が許可を与えることによって、その国の国籍を与える制度」と説明されています。
(参照:国籍Q&A

外国人の方の「帰化したい」という意思表示と、国の許可の両方が必要ということですね。

では、国の許可とは具体的には誰の許可なのでしょう?
法令上、帰化の許可は、法務大臣の権限と定められています(国籍法第4条)。

(帰化の詳細についてはこちらをご参照ください。)

帰化の要件一般

それでは、法務大臣は「この人の帰化は許可する」「この人の帰化は許可しない」ということをどのように決めるのでしょうか。

国籍取得という重大な場面でざっくり感覚的に決められたのでは申請者は予想が立てられず不安でしょう。それに、基準がなければ恣意的な許可不許可も可能になってしまうかもしれません。
やはり、何か許可の目安があるのでしょうか。

この点、以下の通り、国籍法に帰化の要件が定められており、法務大臣は、当該要件が満たされているかどうかを判断していくことになります。

 

(国籍法)
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。

 

まとめると、
住所要件(1号)
能力要件(2号) ※行為能力とは単独で法律行為を行うことができる能力のことです。
素行要件(3号)
生計要件(4号)
重国籍防止要件(5号)
憲法遵守要件(6号)
があります。

こうやって見てみると、借金、債務に関係がありそうなのは、③素行要件と、④生計要件ですね。

果たして、借金がこれらの要件の判断に影響するのか、次で見ていきましょう。

素行要件

帰化の要件の1つとして「素行が善良であること」が求められます(国籍法第5条1項3号)。

抽象的で分かりにくいですが、法務省のホームページでは、

素行が善良であるかどうかは、犯罪歴の有無や態様、納税状況や社会への迷惑の有無等を総合的に考慮して、通常人を基準として、社会通念によって判断されることとなります。

とされています。(参照:「国籍Q&A」)

したがって、借金は借金でも、「税金滞納による債務がある」という場合は、素行要件に影響があるといえます。また、年金保険料の支払いも、素行要件の中で考慮されます。
(年金未払いの場合の帰化については、こちらのコラムをご覧ください。)

なお、税金滞納等以外の借金は、原則、素行要件に関わりません。しかし、借金の程度、未返済の悪質性等によっては、社会への迷惑等の面から、「素行が善良」とはいえず、素行要件を満たさないと判断される可能性もあります。

生計要件

帰化の許可要件として、「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。」が求められていますが、これは

自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。

と説明されています。
(参照:「国籍Q&A」)

すなわち、申請者の収入だけでなく、配偶者や親族の資産・技能で生計を営むことができればいいということです。

「生計を営むことができる」とは

では、「生計を営むことができる」とは具体的にはどういうことでしょうか。起臥寝食が成立していればいいのでしょうか。

この点、「生計を営むことができる」といえるためには、収入が安定しており、日本で暮らす上で困らない程度の世帯収入があることが求められると考えられます。

世帯年収がいくら以上でなければならない、ということは決まっていません。
ここでは詳細を説明することはしませんが、目安は年収300万円程度と言われています。家族構成や個別事情により異なるため、あくまで目安であるため注意が必要です。

借金があっても「生計を営むことができる」といえるのか

では、借金があると、「収入の安定がなく、生計を営むことができていない」と判断されてしまうのでしょうか。

この点、日本人、外国人にかかわらず、通常の生活をしていれば、車のローンがあったり、奨学金の返済を続けていたり…ということは普通に起こりえますし、返済しながらも安定した生活を送っている方は多いでしょう。したがって、返済中の債務があることだけを持って、帰化申請が必ずしも不許可になるわけではありません。
返済計画に従ってきちんと返済しており、生活苦ではない借入であれば、問題とはならないケースも沢山あります。

借金が問題となりうるケースとしては、まず、借金返済のせいで収入より支出が多くなっている場合があります。

具体的には、帰化の申請書類の中に、「生計の概要その1」という書面があり、毎月の収支や負債内容を記載しなければなりません。毎月、負債を返済しているのであれば、これを「支出」の「返済金」の欄に記入します。

「生計の概要その1」の「収入」と「支出」の合計額は一致していなければなりません。

したがって、返済金が多すぎて、「支出」が「収入」を超えてしまう場合は、生計要件を満たさないと判断される可能性があります。

他にも、多重債務に陥り返済の目途が立たない場合や、借金によって生計を立てている場合等も、収入の安定性がなく、生計要件が認められない可能性が高いでしょう。

また、借入をしている内容・理由、返済額、借入先や、返済状況によっても判断が異なる可能性があります。
たとえば、正当な理由なく、滞納や、返済の遅延が複数回あったり、借入が年々増えているとなると、「生計を営むことができる」と判断される可能性が低くなります。

また、住宅ローンのように、借入と同時に、資産を得ている場合には、その資産価値(自宅の価値)がありますので、通常、滞りなく返済できているのなら、問題にはなりません。
逆に、しっかり返済できていることは返済能力・生計能力をしめすことができるといえる面もあります。

しかし、住宅ローンの返済が滞って、不動産を差し押さえられたり、競売にかけられている等の場合には、法務局では不動産の登記情報をすぐに調査されますので、帰化の許可は難しくなる可能性が高いでしょう。

また、法務局による面接の際には、借金については詳しく確認されることが多いため、
借入の内容や、借入をした理由、返済額等、それが正当なもので、生計が維持できるのかを明確にこたえることができるように、しっかり準備をしておくことが大切といえるでしょう。

まとめ

ここまで見てきましたように、借金があること=帰化不許可ではありません。
きちんと返済計画に従って返済できている限り、大きな問題にはならないケースが多くあります。

一番良くないのは、借入を隠して、虚偽の申告をすることです。
帰化においては、書面のみではなく、あらゆる観点から、実態調査がされるのが特徴です。そのため、「これくらい、ばれないだろう」等と軽い気持ちで事実を隠すと、後々窮地に立たされます。虚偽申告をした段階で、違法であり、許可の可能性はなくなります。
そのため、どんなに不利な内容であっても、正直に記載し、申告することが大切です。

実際に、弊所にご相談くださったお客様の中にも、最初は借入のことをお話にならなかった方はおられますが、弊所が申請準備をしている段階でも、申請までに借入があることはすぐに分かります。
そして、住宅ローンや、奨学金、コロナ禍での都道府県の貸付金制度を利用していた方の帰化許可の実績は、弊所でも多数あります。

これまで見てきましたように、借金の性質、借金返済の態様等の個別事情により、借金の素行要件・生計要件への影響は変わってきますので、借入などの帰化に不利になるかもしれないという事実も含めて、全て隠さず、どういった対応をすればよいか、専門家にご相談されることをお勧めいたします。

弊所グループは、大阪事務所(阿倍野・天王寺)と東京事務所(渋谷区・恵比寿)を拠点に活動しており、出張相談・オンライン相談もお受けしております。

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この記事の監修者

柳本 良太
柳本 良太
行政書士・司法書士
行政書士法人やなぎグループ代表社員。
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。

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