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特定技能制度が変更へ!(介護、工業製品製造業、外食業分野)

2025.05.16

昨今の人手不足の深刻化等を受け、令和7年3月11日の閣議決定により、特定技能ビザの介護、工業製造業、外食業分野の分野別運用方針が変更されました。(実際の運用は、上乗せ告示等の公布・施行以降となります。なお、介護分野については、令和7年4月21日に上乗せ基準告示の改正が行われ、運用が開始されました。)今回は、これら3分野についてどのような変更が行われたのか見ていきます!

特定技能制度 変更の背景

特定技能ビザは、国内の人材不足解消を目的として2019年に創設されました。現在は、特に人手不足が深刻な16分野の産業が対象となっています。このように対象分野は多岐にわたる上、人手不足の状況や必要な人材も分野ごとに異なります。そこで、各分野の詳細については、法務大臣が各関係行政機関の長、国家公安委員会、外務大臣、厚生労働大臣と共同して作成する「分野別運用方針」で定めることとなっています(入管法第2条の4第1項参照)。

また、分野別運用方針には、以下の事項を定めることとされています。

一 当該分野別運用方針において定める人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野

二 前号の産業上の分野における人材の不足の状況(中略)に関する事項

三 第一号の産業上の分野において求められる人材の基準に関する事項

四 第一号の産業上の分野における(中略)在留資格認定証明書の交付の停止の措置又は交付の再開の措置に関する事項

五 前各号に掲げるもののほか、第一号の産業上の分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する重要事項

(入管法第2条の4第2項参照)

上記の通り、特定技能ビザの申請者側の要件・受入機関側の要件等の詳細は、各分野の分野別運用方針等でそれぞれ定められています

そして、令和7年3月11日の閣議決定では、特定技能ビザにおける介護、工業製造業、外食業分野での運用を変更するため、それぞれの分野別運用方針に変更が加えられました。それでは、それぞれどのような変更が行われたのか、以下で見ていきましょう。

 

特定技能ビザの概要についてはこちらをご参照ください。

https://immigrationlawyer.co.jp/column/%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E9

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介護分野の変更

介護分野の業務内容

〇1号(相当程度の知識又は経験が必要な業務)

身体介護等(入浴、食事等)

レクリエーションの実施、リハビリテーションの補助

関連業務(お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充や管理等)

 

〇2号(熟練した技能を要する業務)

なし

改正に至った経緯

訪問介護が通常の介護と異なるのは、基本的に1対1で行われるため、監督の目が行き届かないということです。そのため、訪問介護を行うには、介護職員初任者研修修了者、介護福祉士実務者研修修了者、または介護福祉士の資格保有者であることが必要とされています。訪問介護のこのような特殊性から、特定技能ビザでは従事が認められていませんでした。

しかしながら、訪問介護は特に人材不足が著しく、訪問介護業者の倒産も増加しており、何らかの対策が急務となっていました。また、日本が魅力ある就労先として選ばれるため、訪問介護を含む多様な業務の経験により外国人がキャリアアップできるような仕組み作りの需要もありました。

そこで、特定技能外国人による訪問介護を認めるという方向で介護分野の改正が行われました。

 

参照:

第7回 外国人介護人材の業務の在り方に関する

検討会 議事録https://www.mhlw.go.jp/content/001332263.pdf

 

特定技能制度に係る既存の分野別運用方針の改正について(令和7年3月11日閣議決定)

https://www.moj.go.jp/isa/content/001434993.pdf

変更点

今回の変更により、特定技能外国人の訪問系サービスへの従事が認められることとなりました。但し、訪問介護に従事できるためには、特定技能外国人、受け入れ機関の双方に、以下の要件が課されています。

要件の対象者

要件

特定技能外国人

介護職員初任者研修課程等の修了。

実務経験等を有する1号特定技能外国人であること。

受入れ機関

・訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと。

・一定期間、責任者等が訪問介護等に同行する等により必要な訓練を行うこと。

・訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること。

・ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること。

・1号特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと。

 

介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針

https://www.moj.go.jp/isa/content/001434811.pdf

工業製品製造業分野の変更

工業製品製造業分野の業務内容

〇1号(相当程度の知識又は経験が必要な業務)

各区分(機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理、紙器・段ボール箱製造、コンクリート製品製造、RPF製造、陶磁器製品製造、印刷・製本、紡織製品製造、縫製)に関する作業(製造、処理、成形等)

関連業務(原材料・部品の調達・運搬、クレーン等運転作業、清掃、保守管理作業)

 

〇2号(熟練した技能を要する業務)

各区分(機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理)に関する作業(製造、処理、成形等)

関連業務(原材料・部品の調達・運搬、クレーン等運転作業、清掃、保守管理作業) 

改正に至った経緯

令和6年3月29日の閣議決定において、工業製品製造業分野での特定技能外国人受入見込み数が変更されました。令和元年度から5年度では49,750人であったのに対し、令和6年度から10年度では173,300人となり、3倍以上に増えたのです。

 

同時に、対象業務区分も、

従来の3区分①機械金属加工、②電気電子機器組み立て、③金属表面処理)に、

新たな7区分④紙器・段ボール箱製造、⑤コンクリート製品製造、⑥陶磁器製品製造、⑦紡織製品製造、⑧縫製、⑨PRF製造、⑩印刷・製本

が追加され、可能な業務が10区分となりました。

このような大幅な変更に対応するため、受入体制の整備が必要となりました。

 

また、工業製品製造業分野の技能評価試験の運営等は経済産業省が実施してきましたが、民間団体に業務を移管することになったため、民間団体の創設が必要となりました。

このような体制整備の必要性から、令和7年3月の閣議決定により分野別方針への変更が行われました。(実際の運用は、上乗せ基準等の公布・施行後になります。)

変更点

工業製品製造業分野においては、令和7年3月の閣議決定により、新たな義務が創設されました。内容は以下の通りです。

義務の対象者

追加された義務

製造事業者団体等

・①②を行う団体を共同で設置する

①     製造業分野における特定技能外国人の適正かつ円滑な受入れの実現に向けた共同ルールの策定及び遵守状況の確認

②     海外の現地機関との調整、技能試験の場所確保、実施、受験者の募集

受入れ機関

生産性向上・国内人材確保のための取組

・上記新設団体への所属

・「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」において協議が調った措置を講じる

経済産業省等が行う一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、意見の聴取、現地調査その他業務に対し、必要な協力を行う

・特定技能外国人に対し、必要に応じて訓練・各種研修を実施

・特定技能外国人からの求めに応じ、実務経験を証明する書面を交付

(これらの変更は、経済産業省が定める一定の期間を経過してから適用)

 

外食業分野の変更

外食業分野の業務内容

〇1号(相当程度の知識又は経験が必要な業務)

飲食物調理(食材仕込み、盛付け等)

接客(席への案内、注文伺い、代金受取り、商品の受渡し、苦情等への対応等)

店舗管理(衛生管理全般、シフト管理、従業員の指導・研修、顧客情報の管理、レジ・券売機管理、会計事務管理、社内本部・取引事業者・行政等との連絡調整、各種機器・設備のメンテナンス、食材等の発注等、メニューの企画・開発、宣伝・広告の企画、作業マニュアルの作成・改訂等)

関連業務(店舗で使用する農林水産物の生産、調理品等以外の物品の販売等)

 

〇2号(熟練した技能を要する業務)

飲食物調理(食材仕込み、盛付け等)

接客(席への案内、注文伺い、代金受取り、商品の受渡し、苦情等への対応等)

店舗管理(衛生管理全般、シフト管理、従業員の指導・研修、顧客情報の管理、レジ・券売機管理、会計事務管理、社内本部・取引事業者・行政等との連絡調整、各種機器・設備のメンテナンス、食材等の発注等、メニューの企画・開発、宣伝・広告の企画、作業マニュアルの作成・改訂等)

・店舗経営(店舗の経営分析、経営管理、契約に関する事務等)

関連業務(店舗で使用する農林水産物の生産、調理品等以外の物品の販売等)

改正に至った経緯

まず前提として、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、「風営法」とします。)は、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する」(同法1条)ことを目的としており、善良の風俗等に影響を与えうるような一定の営業について許可を求めています。例えば、直接接待を行うようなキャバレーやスナック、深夜に酒類を提供するバー、ゲームセンター、性風俗等は風営法上の許可を得る必要があります(同法2条、3条参照)。

(参照:警視庁風俗営業等業種一覧 

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/fuzoku/gyoshu_ichiran.html

特定技能の外食業分野においては、安全な労働環境の確保のため、上記のような風営法の許可を受けた営業所での就労は許されていませんでした。しかし、それですと、バーやスナックだけではなく、多くの旅館やホテルの調理場、食事処、宴会場等における就労すらも許されないことになってしまい、不都合がありました。(お酌等の接待を行うホテル、旅館も多いため、多くの旅館やホテルが風営法上の許可の対象となっているからです。)

 

このような状況の中、コロナ禍が過ぎ、インバウンド需要が急速に回復、宿泊施設の飲食部門が深刻な人手不足に陥ったため、旅館、ホテル業界の団体等が就労場所の緩和を求めました。

変更点

上述の通り、変更前は、特定技能の外食業分野において、風営法の許可を得ている旅館、ホテルで働くことは許されていませんでした。しかし、令和7年3月11日の閣議決定により、風営法の許可を得た旅館、ホテルであっても、「旅館業(旅館業法2条1項)」(施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業)を行うとして旅館業法の許可(3条1項)を得ていれば、飲食関連業務に従事することが可能となりました。(実際の運用は、上乗せ基準等の公布・施行後になります。)

変更前と変更後は以下の表の通りです。

旅館、ホテル

業務

変更前

変更後

風営法許可

旅館業法許可

 

あり

 

なし

接客

飲食物調理

店舗管理

接待

 

あり

 

 

あり

接客

飲食物調理

店舗管理

接待

 

なし

 

なし

接客

飲食物調理

店舗管理

接待

 

なし

 

 

あり

接客

飲食物調理

店舗管理

接待

(✕=できない、〇=できる)

なお、上記の通り、風営法上の「接待」は禁止されていますので注意が必要です。

風営法において「接待」とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」(同法2条3項)と定義されており、通達によると「特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うこと」をさします。

 

具体的には、以下のような行為が「接待」にあたります。

・特定少数の客に対し、継続的に談笑、お酌等を行う

・特定少数の客に対し、客室等において、ショー等を見せ、又は聴かせる

・特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを勧奨し、その客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくは褒めはやしたり、一緒に歌ったりする

・特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、当該客にダンスをさせる

・客の身体に接触せず、特定少数の客の近くに位置し、継続して、その客と一緒に踊る

・特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う

・客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する

・客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる

 

なお、接待と接客の違いは微妙になりうるので、注意が必要です。

 

(参照:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について

(通達)https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/hoan20180130.pdf

まとめ

令和7年3月11日の閣議決定により、特定技能の介護分野では訪問介護が可能となり、外食業分野では風営法、旅館業法の許可を得ている旅館、ホテルでの勤務が可能となりました。また、工業製品製造業分野では、外国人受入見込み数、対象業務区分の増加に伴い、制度整備が進められています。

このように、特定技能外国人の働ける分野が拡大しています。しかし、特定技能では改正も多く、制度内容も複雑であるため、どのような業務が対象となるのか分かりにくいこともあるかと思います。特定技能ビザの取得をご検討されている外国人の方、特定技能外国人の受け入れをご検討されている会社様はぜひお気軽にご相談ください。

 

参考:

特定技能1号の各分野の仕事内容https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/10_00179.html

特定技能制度に係る既存の分野別運用方針の改正について(令和7年3月11日閣議決定)

https://www.moj.go.jp/isa/content/001434993.pdf

 

 

 

 

 

 

 

この記事の監修者

柳本 良太
柳本 良太
行政書士・司法書士
行政書士法人やなぎグループ代表社員。
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。

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