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帰化申請

オーバーステイと帰化・永住

2024.07.22

オーバーステイはれっきとした犯罪であり、将来のビザ申請に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 それでは、「すでにオーバーステイの経歴・記録がある場合」は帰化・永住申請では、許可されないのでしょうか? 今回は、オーバーステイ歴が帰化・永住申請にどのような影響を及ぼすか、注意すべき点を簡潔に説明します。

オーバーステイとは

オーバーステイとは、正規な手続きを経て日本に入国した外国人が、在留期間を超過して、日本に違法状態で滞在することを指します。

不法滞在の種類のひとつで、このようなケースを「不法残留」と呼びます。

 

これに対し、パスポートを偽造する等して、入国当初から在留資格をもたずに不法に入国した外国人が日本国内で暮らすのは、「不法在留」と言います。

 

オーバーステイとなった場合には、「出入国管理および難民認定法」により以下の罰則が定められています。

 

第七十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。

 

 

 

 

また、これらの刑罰を科された上で、退去強制処分(強制送還)を受けるのが通常です。

 

さらに、退去強制などの強制的な手続きで出国した場合には、少なくとも5年間は再び日本に入国することはできないことになっています。

 

こういった事態を避けるために、

すでにオーバーステイになっている人は、速やかに入国管理局に自主的に出頭し、『出国命令制度』を利用するか、『特別在留許可申請』、あるいは、別の手段での在留資格が認められる対象にならないかを出入国在留管理庁や専門家に相談しましょう。

 

出国命令制度

自主的に出国した人は「出国命令制度」を利用し、以下の条件を満たせば再入国禁止期間が1年に短縮されます。

 

【適応要件】 

  1. (ア)速やかに日本から出国する意思を持って自ら入国管理官署に出頭したこと
  2. (イ)在留期間を経過したこと以外の退去強制事由に該当しないこと
  3. (ウ)入国後に窃盗等の所定の罪により懲役又は禁固に処せられていないこと
  4. (エ)過去に退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと
  5. (オ)速やかに日本から出国することが確実に見込まれること

 

この際には、出国の航空便の予約をとった上で、予約票とともに、ご相談に行かれることをお勧めいたします。

 

在留特別許可

オーバーステイ   「不法残留」となった場合であっても、必ずしも強制送還されるというわけではなく、人道的な見地から、在留特別許可が交付され、引き続き日本に滞在することが可能となるケースがあります。

 

この「在留特別許可」は、入国管理局で在留を継続する理由を述べ、在留特別許可を受ける必要があります。

 

在留特別許可は、次のような条件を満たす場合に認められやすくなります:

  1. (1)自ら入国管理官署に出頭申告したこと
  2. (2)日本人または特別永住者との婚姻関係や家族関係(実子)
  3. (3)以前に、日本国籍を有していたことがある場合
  4. (4)日本の初等・中等教育機関に在学し、相当期間日本で生活している実子を監護及び養育していること
  5. (5)日本での滞在期間が長期に及び定着性が認められること
  6. (6)インドシナ難民、第三国定住難民、中国残留邦人 等で難民認定を受けていることや、本国における情勢不安で帰国困難な状況があること等の人道上の理由がある
  7. (7)難病等により日本での治療を必要としていること、このような治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること 等

 

こういった在留特別許可以外にも、その他、別の何らかの在留資格が認められないか、適法に在留できうるケースに当てはまらないのか 等については、出入国在留管理庁や行政書士等の専門家に相談しましょう。

 

なお、オーバーステイで、「出国命令制度」の適用対象外であっても、自ら入国管理官署に出頭した方々に対しては、仮放免の許可を与え、収容することなく手続きを進めることができます。

 

詳しくは入国管理局のガイドラインをご覧ください。

 

オーバーステイの場合、帰化申請は可能か?

オーバーステイの経歴がある方は、帰化申請は難しくなります。

オーバーステイは前科及び犯罪履歴に該当するため、帰化申請に求められる要件の一つである「素行善良」に、マイナス要素となってしまいます。

 

オーバーステイになってからの待遇は大きく2パターンに分けられます。

 

【①(通常)  速やかに日本から離れないといけない】

オーバーステイという違法な滞在状態となった外国人は原則として、出国命令制度を利用して、出頭し、速やかに日本から出国しなければなりません。

 

・ 速やかに日本から出国しなければならず、通常は最長15日の出国期限が与えられます  

・ 日本への上陸拒否期間(自ら出頭の場合1年/その他の場合5年)

 

<帰化申請の目線からする…>

オーバーステイという行為                    ➡

違法行為であり、素行要件に大きく響きます

無在留資格となり日本から出国            ➡

居住要件の経過年数がリセットされます

上陸拒否事由期間(1年または5年)   ➡

自ら出頭の場合1年(その他の場合5年)の上陸拒否期間中は、新たに在留資格を得ることができません

 

※その他要件あり。

※帰化に必要な条件についてはこちらの記事をご覧ください

 

過去のオーバーステイの状況にもよりますが、

結論として、オーバーステイになったら 「今後一切 帰化申請が不可能」とまでにはいかずとも、帰化申請を控える経過年数が長く(ケースにより)、帰化申請のハードルがかなり上がってしまいます。

 

【②(特例) そのまま日本での滞在を認められる】

上記①で説明した通り、オーバーステイ状態になったしまった外国人は、通常は15日以内に出国命令制度を利用して、出入国在留管理庁に出頭し、日本から出国しなければなりません。

 

ただし、「在留特別許可」という、オーバーステイの状態から、出国せず合法的に日本に滞在可能にする‘‘特別許可‘‘が与えられるケースがあります。

 

退去強制・出国命令の制度の元で出国するオーバーステイの方と比べ、どういう違いがあるのかを見てみましょう。

 

<退去強制・出国命令>:

・ 出国命令制度を利用して、出入国在留管理庁に出頭し、速やかに日本から出国しなければならず、通常は最長で15日の出国期限が与えられる  

・ 上陸拒否期間(自ら出頭の場合1年/その他の場合5年)

 

<在留特別許可>

➡引き続き、日本での滞在が認められます。

➡日本から離れる必要がなくなったため、上陸拒否の期間も当然、設けられていません。

 

<帰化申請の観点から…>

オーバーステイという行為       ➡

違法行為であり、素行要件に大きく響きます

日本から出国せずに済む       ➡

出国しないため、居住要件としての年数リセットはされない。

しかし、在留特別許可を得てから10年経過後に帰化申請が可能

※その他要件あり

上陸拒否事由期間(1年または5年)がない                                          ➡

 

上記の比較から、「在留特別許可」とは、オーバーステイ状態から合法的に日本に滞在することを可能にする特別な許可であることが分かります。

ただし、重要な点は、出国処分が免れたとしても、「在留特別許可」は法律違反を取り消すものではなく、単に特別な在留が許可されるということです。外国人が「在留特別許可」を得て帰化するには、許可を得てから10年以上が経過する必要があります。

 

 

【在留特別許可の許否判断】

「出頭申告のご案内~不法滞在で悩んでいる外国人の方へ~(法務省入国管理局) 」には、は、以下の内容が記載されています。()

 

○引続き日本国内での生活を希望される方は,まずは入国管理官署に出頭して,日本で生活したい理由等を申し述べてください。

・先般改訂した「在留特別許可に係るガイドライン」には,在留特別許可の許否判断を行うに当たっての積極要素として,日本人と婚姻が成立している場合などのほか,

  1. (1)自ら入国管理官署に出頭申告したこと,
  2. (2)日本の初等・中等教育機関に在学し相当期間日本で生活している実子を監護及び養育していること,
  3. (3)日本での滞在期間が長期に及び定着性が認められること等を挙げていますので,このガイドラインをよくお読みください。

 例えば,(3)に該当し,かつ,他の法令違反等がない方が,出頭申告した場合には,在留特別許可方向で検討されやすくなることをガイドラインで紹介しています。

 

 

オーバーステイの場合、永住権は申請できますか?

 

今までオーバーステイになってから、処遇について「出国命令制度をつかって、速やかに日本から離れる」/「そのまま日本の滞在を認められる」の2パターンがあると紹介しました。

 

『速やかに日本を離れる』としても、『単に日本からなんとか出国すればよい』というものではなく、『出入国在留管理庁に出頭する』ことが、今後の日本での出入国を行う上では非常に大切です。

 

永住申請の場合も、パターンのより申請の可否が異なります。

 

【①(通常)  速やかに日本から離れないといけない場合】

オーバーステイという違法な滞在状態となった外国人は原則として、出国命令制度を利用して、出入国在留管理庁に出頭し、速やかに日本から出国せねばなりません。

・ 速やかに日本から出国せねばならなく、通常は最長15日の出国期限が与えられる  

・ 上陸不可期間(自ら出頭の場合1年/その他の場合5年)

 

<永住申請の目線からする…>

オーバーステイ行為自身                   ➡

違法行為であり、素行要件に大きく響きます

無在留資格となり日本から出国         ➡

居住要件の経過年数がリセットされます

上陸拒否事由期間(1年または5年)

                                                  ➡

自ら出頭の場合1年(その他の場合5年)の上陸拒否期間中は、新たに在留資格を得ることができない。

 

※その他要件あり。

※ 永住に必要な条件についてはこちらの記事をご覧ください

 

【②(特例)  そのまま日本での滞在を認められる】

「在留特別許可」を得れば、

オーバーステイの状態から、出国せず合法的に日本に滞在可能になります。

 

在留特別許可を得てから10年間経過して初めてできる帰化とは異なり、永住権申請の場合は、その控え期間を特に定められていません。

例として、日本人の配偶者としてオーバーステイの記録があっても、3年で永住権を取得した例があります。

※永住ビザの取得要件については、こちらの記事をご覧ください

 

 

まとめ

今回は、オーバーステイの記録が帰化や永住申請に与える影響について説明いたしました。

 

オーバーステイの状態で帰化や永住申請を行うことは可能ですが、許可される可能性は著しく低下します。申請手続きの複雑さは言うまでもありません。

 

オーバーステイを避けるためには、ご自身の在留資格の期限に、十分に注意を払う必要があります。

一方で、不運なことに、既にオーバーステイ状態にある場合でも、まだ日本で生活を再開する道は残されております。

そこで最も重要なのは、事実が発覚後の対応です。

誠実に入管に出頭して帰国すれば、1年後にまた在留資格を申請して日本に来られる可能性が高いです。

その他、オーバーステイの記録に不安を感じる方やその他疑問点がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修者

柳本 良太
柳本 良太
行政書士・司法書士
行政書士法人やなぎグループ代表社員。
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。

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