経営・管理ビザ
経営・管理ビザの取得要件(飲食店経営の場合)
- 2024.12.13
「日本に移住して飲食店を経営したい。」 「日本での会社勤めを辞めて、飲食店をオープンしたい。」 外国人の方がこのような理由で日本に滞在される場合、経営・管理ビザを取得することが考えられます。 それでは、経営・管理ビザを取得するにはどのような要件を満たす必要があるのでしょうか。以下で見ていきましょう!
経営・管理ビザとは
経営・管理ビザは、就労ビザの1つであり、日本で会社等を経営したり、管理者(取締役、監査役、部長、支店長、工場長等)として働いたりするためのビザです。在留期間は、5年、3年、1年、6ヶ月、4ヶ月、3ヶ月のいずれかとなります。
出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」とします。)では、
「日本で貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」
に対して付与される在留資格として定められています(入管法別表第一の二参照)。
「貿易」が挙げられていますが、これは「事業」の例示にすぎず、業種を限定する意味ではありません。適法な事業である限り、その業種に限定はなく、飲食店の経営も「事業」に含まれることになります。
(但し、一定の法律・会計業務は対象事業から除かれています(入管法別表第一の二括弧書き参照)。)
なお、経営・管理ビザの概要につきましては、こちらをご参照ください。
経営・管理ビザの一般的な取得要件
業種いかんにかかわらず、経営・管理ビザを取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
①在留資格該当性と、②上陸許可基準適合性です。
では、それぞれについて見ていきましょう。
在留資格該当性について
在留資格該当性とは、外国人が日本で行おうとしている活動の内容が、入管法に定められた各在留資格の活動に合致していることをさします。
経営・管理ビザでは、外国人の活動内容が、「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」(入管法別表第一の二の表参照)に該当することが必要です。
なお、飲食店経営では「事業の経営」にあたることが必要となります。
上陸許可基準適合性について
日本に入国を希望する外国人は、入管法で定める在留資格のいずれかに該当する必要がありますが、さらにどのような具体的条件を満たせば実際に入国が許可されるのかが法務省令により定められています。これを「上陸許可基準」と呼んでいます。基準に適合しない場合は原則として入国できない仕組みになっているため極めて重要なものです。
経営・管理ビザにも、具体的にその基準が以下のように定められています。
(「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」の「経営・管理」の項参照)。
事業所についての要件(1号)
「申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし,当該事業が開始されていない場合にあっては,当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。」
「事業所」は、一定の場所において継続的なサービス提供を行う拠点となることが必要であるため、移動店舗、月単位の貸店舗のようなケースでは「事業所」と認められないことになります。
(参考:「経営・管理」の在留資格の明確化等について)
なお、「事業所」の詳細につきましては、こちらのブログをご覧ください。
事業規模についての要件(2号)
「申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。」
経営・管理ビザを取得するためには、ある程度の事業規模であることが求められます。事業規模の物差しとしては、「職員(イ)」、「資本金(ロ)」があり、いずれかによって、(または両方の混合(ハ)によって)、その規模を示す必要があります。
「職員」を選択される場合は、「二人以上の常勤の職員」が必要となります。但し、この場合、活動系のビザで日本に滞在する外国人(「法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者」)が除外されていることに注意が必要です。すなわち、「職員」は、日本人、または身分系のビザを有する外国人(永住者等)である必要があります。
次に、「資本金」を選択される場合ですが、資本金・出資額500万円というのは、単に事業の規模についての要件であり、外国人本人が出資しなければならないわけではありません。
もっとも、経営管理ビザを取得するには、その申請人が、経営権・議決権を持つか、管理者として雇用される方である必要があるため、新たに起業する場合には、通常は、出資金の過半数、または出資金500万円に近い程度の大半の出資を経営者自身が行うのが一般的です。
事業主体が法人であれば、その資本金の額を示すことにより比較的容易にこの500万円の要件を満たすことを立証することができますが、個人事業主の場合は立証が難しくなりますのでご注意ください。
なお、「資本金」の詳細については、こちらのブログをご参照ください。
経験及び報酬についての要件(3号、「管理」の場合のみ)
「申請人が事業の管理に従事しようとする場合は,事業の経営又は管理について三年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し,かつ,日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。」
本号は、「管理」の場合の要件になりますので、今回は割愛させて頂きます。
飲食店経営で経営・管理ビザを取得するために注意すべきこと
「飲食店を経営したい!」と考えたとき、ビザのこと以外にも、「どこでやろう?どんな設備が必要なのかな?」「何か許可がいるのかな?」「会社はいつ設立すればいいのかな?」「手伝ってくれる人を探さないと…」等、様々な悩みが出てくるかと思います。
そこで、飲食店経営特有のポイントについて、次で見ていきましょう。(ここでは、法人を念頭において説明いたします。)
不動産賃貸借契約の締結
「場所はどこがいいかな。ゆっくり探したいなぁ。」と思われるかもしれませんが、まず不動産を確保しましょう。
なぜかといいますと、法人設立のために「本店所在地」が必要となるからです。
ここで、「あれ?契約主体はどうなるの?まだ会社は設立できていないのに。」と思われるかもしれません。そうなのです。確かに、設立登記前の会社は、いまだ法人格を有さないため契約の主体となることはできません。また、発起人には、設立中の会社の代理・代表として賃貸借契約の締結を行う権限はありません(会社法第28条参照)。
ではどうすればよいのでしょうか。
通常は、発起人や協力者(永住者または日本人等の協力者)の名義で不動産賃貸借契約を締結します。
しかし、上記の通り、発起人には会社のために契約を締結する権限がないため、会社設立後、自動的に会社に契約が引き継がれるということはありませんので、「会社設立後は、契約当事者を発起人から会社に変更する」といった内容の特約を賃貸借契約書に加えてもらうようにします。
なお、賃貸借契約書は、「事業所」についての立証資料の1つとして入国管理局に提出することになりますので、その内容が「事業所」要件と矛盾しないように注意しましょう。例えば、使用目的が誤って「居住用」となっていないか等、しっかり確認しましょう。
この事業所に関しては、事業として成り立つところでなければなりませんので、バーチャルオフィス等ではいけません。
また、後述の営業許可の取得を見据え、適した物件を探しましょう。
(当グループの賃貸借契約書作成サービスにつきましては、こちらをご参照ください。また、当グループでは物件探しもお手伝いしておりますので、お困りの際はぜひご相談ください。)
法人の設立
不動産賃貸借契約を締結したら、次は法人設立です!
「経営・管理ビザがおりるか分からないのに、先に法人を設立するのはリスクが高いなぁ。無駄になってしまうかもしれないし…」と悩まれるかもしれませんが、まず法人を設立しましょう。
確かに、事前の法人設立は、経営・管理ビザの必須の要件というわけではありません。未設立の段階でもビザの付与が認められることはあります。
しかし、とりわけ、飲食店経営で経営・管理ビザを取得しようとする場合は、少し事情が異なります。飲食店では、後述の通り、事前に法人名義で営業許可を取得し、在留資格が認められれば営業開始できるような状態でなければならないため、先に法人を設立し、事業所を確保しておくことが必要となるのです。
法人設立は、登記申請書を、本店所在地を管轄する法務局に提出して行います。
その際、事業規模要件で資本金要件(ロ)を選択した場合は、会社の資本金を500万円以上にするように注意しましょう。出資にあたっては、前述のご説明をご参照ください。
飲食店営業許可の取得
法人が設立できたら、法人名義で飲食店営業許可をとりましょう(食品衛生法55条参照)。
経営・管理ビザの申請では、「当該事業が適法である」ということを入国管理局に示さねばなりません。営業許可を取得していれば、少なくとも食品衛生法55条1項には反していないということができ、事業の適法性を示す一助となります。
また、経営管理ビザの取得に関しては、すぐに事業・営業ができる状態でなければなりませんので、飲食店の営業許可がおりていなくとも、少なくとも営業許可申請までは済ませておく必要があります。
飲食店営業許可の細かい要件は都道府県ごとに異なりますが、基本的には、天井、壁、調理場、給水場、間仕切り、構造、器具等に関する要件があり、保健所の立入調査等により要件充足の有無を確認します。
そのため、経営管理ビザの申請の前に、店舗の確保・設備の設置等も必要ということです。
なお、飲食店営業許可の取得には、食品衛生責任者の資格が必要となるため、事前に資格取得のための講習を受けておきましょう。場合によっては防火管理者の設置も必要となるため、確認が必要です。
ちなみに、経営管理ビザでは、店舗の広さ等に応じた収支計画が成り立つか、経営者の収入が日本で生計を維持できる金額を確保できるか(具体的には300万円程度以上)もポイントになりますので、飲食店の店舗選びが非常に重要であると言えるでしょう。
従業員の確保
「母国料理を自分で作って提供したい!」「人と話すのが好きだから接客をしたい!」
ということは、残念ながら経営・管理ビザでは認められていません。
許されているのは、あくまで「経営」活動のみであり、調理や接客を行うのであれば、在留資格該当性が認められないということになってしまいます。(但し、一時的な接客等であれば経営の不随行為として認められる場合があります。)
しかしながら、飲食店経営では必ず、調理や接客等の現業活動が発生してしまいます。そこで、現業活動を担当する従業員を別途確保することが必要となります。
ビザ申請前に従業員を雇用する場合は、具体的なシフト表、雇用契約書等を入国管理局に提出することで「申請人は経営活動しかしません」ということを立証していきます。
とはいっても、開業前に従業員を確保しておくのは困難な場合もあるでしょう。その場合は、「開業後、遅滞なく従業員を採用する」という雇用・人員計画を入国管理局に示していくことになります。
なお、500万円以上の資本金要件を満たす場合は、ここでの従業員は職員要件(イ)を満たす必要がないため、活動系のビザで日本に滞在する外国人でもかまいません。但し、留学生のアルバイトは週28時間以内に限定される等、制約があるため注意が必要です。
事業計画書の作成
経営・管理ビザが無事付与されたものの、すぐに倒産、廃業となってしまっては、申請人の苦労は水の泡。それに「外国人経営者・管理者を日本に増やしたい」という経営・管理ビザの趣旨もかないません。そこで、事業計画書によって事業の安定性、継続性を入国管理局に示す必要があります。
事業計画書では、申請人の経歴、経営理念、事業内容、取引先、資金調達等を整合性をもって説得的に述べる必要があり、経営・管理ビザ特有の重要な提出書類です。
やなぎグループは、これまで経営・管理ビザ申請を多く行ってきております。どのような点に注意して書けばいいのか、どうすれば説得力をもった事業計画書となるのか等、お悩みの方はぜひご相談ください。
また、事業計画書の記載例については、こちらをご覧ください。
まとめ
経営・管理ビザは、以前の「投資・経営」ビザから外国資本要件を削除することにより、外国人経営者、管理者の受入れを促進しようとするものです。しかしながら、会社の設立や500万円の資本金が必要となる等、依然としてハードルが高い部類のビザにはなってしまいます。
特に飲食店経営では、事前の設備投資等、多くの準備が必要となることから、経営・管理ビザ取得の見込みがあるのか、他により適したビザがないか等、慎重に検討することが肝要です。
経営・管理ビザ申請のサポートやご質問はお気軽にご相談ください。
弊所グループは、大阪事務所(阿倍野・天王寺)と東京(渋谷区・恵比寿)を拠点に活動しており、出張相談・オンライン相談もお受けしております。
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この記事の監修者
- 柳本 良太
- 行政書士・司法書士
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。
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