特定技能・技能実習
外国人運転手のビザ~特定技能1号~
- 2025.03.11

外国人観光客の増加、現役運転手の高齢化等によりタクシーやバスの運転手は慢性的な人手不足にあります。2024年4月には、トラック運転手の時間外労働に上限規制が設けられたため、トラック運転手も不足しています。これらの問題を解消するため、2024年の閣議決定を受けて、同年12月より、特定技能ビザの対象分野で、自動車運送業(運転手等)の受入れが可能となりました。 2025年2月には全国で初めて外国人バス運転手が誕生しています。 特定技能に自動車運送業が追加されたことにより、何がどう変わったのか、どのように特定技能ビザを取得することができるのか、本コラムで見ていきましょう。
そもそも特定技能ビザとは何か?
特定技能ビザの制度目的とこれまでの流れ
一旦、車から離れますが…
日本で人手が不足している分野といえば、「農業」や「介護」があります。日本では少子高齢化、過疎化等により、なり手の少ない分野ですが、
「自国で農業をしていたので、日本でも農家で働きたい!」
「介護業界で働いて手に職をつけたい!」
等、と興味を持って下さる外国人の方々はいらっしゃいます。しかし外国人が日本で働くためには何らかの在留資格が必要です。
そこでみてみると、
まず、一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」ビザは、ホワイトカラーの職種を対象としており、上記のような現場業務は対象ではありません。
また、介護等、一定の現場業務を可能とする特定活動46号というビザもあるのですが、日本の大学又は大学院の卒業等が必要であり、業務内容も日本語でのコミュニケーションを必要とするものでなければならない等、ハードルが高くなっています。
そうすると、配偶者ビザ等、就業内容に制限のないビザを持っていない限り、外国人が上記のような現場業務を行うことは困難であり、せっかく人手不足の分野で働きたいという外国人の方がいらっしゃっても、人手不足解消につなげることが難しい状況でした。
そこで、2019年、特定技能制度が開始され、ホワイトカラー以外の12分野(「介護」「農業」を含む)においても外国人を雇用することが可能となりました。特定技能ビザでは、特定活動46号のような学歴要件もありません。
このように、特定技能ビザは、人手不足解消を目的としたビザであるため、その時勢によって、新たな分野が追加されます。そして、2024年3月29日の閣議決定では、新たな人手不足の分野として
「自動車運送業」、「鉄道」、「林業」、「木材産業」
の4分野が追加され、対象業種は16分野となりました。
この「自動車運送業」には、今回のテーマである、トラック、バス、タクシーの運転手が含まれます。
特定技能ビザの対象業種、追加業種の詳細についてはこちらのブログをご覧ください。
特定技能ビザの種類(1号、2号)
上記の通り、特定技能は人手不足を解消とした就労ビザであり、学歴要件はありません。しかし、あくまで就労を目的とするビザであるため、外国人の方が既に一定の技能(スキル)を持っていることは前提となります。
どの程度習熟した技能(スキル)が必要な分野・業務なのかにより、「特定技能1号」と「特定技能2号」に分かれています。
特定技能1号の概要(※自動車運送業は1号のみ)
上記の通り、特定技能1号では「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」が要求されるのに比べ、特定技能2号ではより高度なスキル、「熟練した技能」が求められます。このような違いから、特定技能2号の方が優遇された内容となっています。
自動車運送業は特定技能1号のみであるため、ここでは特定技能1号の方を見てみたいと思います。(なお、特定技能1号2号の違い、全分野共通要件、申請の流れ等につきましてはこちらをご覧ください。)
【特定技能1号の概要】
分野別運用方針とは
ここまで特定技能の全分野に共通する事項について見てきましたが、特定技能の対象は16分野と多岐にわたる上、人手不足の状況や必要な人材も分野ごとに異なります。そこで、各分野の詳細については、法務大臣が各関係行政機関の長、国家公安委員会、外務大臣、厚生労働大臣と共同して作成する「分野別運用方針」で定められています(入管法第2条の4第1項参照)。
また、分野別運用方針には、以下の事項を定めることとされています。
一 当該分野別運用方針において定める人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野
二 前号の産業上の分野における人材の不足の状況(中略)に関する事項
三 第一号の産業上の分野において求められる人材の基準に関する事項
四 第一号の産業上の分野における(中略)在留資格認定証明書の交付の停止の措置又は交付の再開の措置に関する事項
五 前各号に掲げるもののほか、第一号の産業上の分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する重要事項
(入管法第2条の4第2項参照)
上記の通り、特定技能ビザの申請者側の要件・受入機関側の要件等の詳細は、各分野の分野別運用方針等でそれぞれ定められているということになります。
自動車運送業分野(運転手等)についても、
「自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
(以下、「自動車運送業分野の運用方針」とします。)という分野別運用方針が定められています。そこで、次は、自動車運送業分野の運用方針を中心として、自動車運送業分野にフォーカスして見ていきましょう。
特定技能:自動車運送業分野の概要
これまで特定技能ビザ全般に共通する事項について見てきました。ここからは、自動車運送業分野について特に定められている事項等について見ていきたいと思います。
業務区分
自動車運送業分野の運用方針では、特定技能の自動車運送業分野での業務を以下のように定めています。
- 事業用自動車(トラック)の運転、運転に付随する業務全般
- 事業用自動車(タクシー)の運転、運転に付随する業務全般
- 事業用自動車(バス)の運転、運転に付随する業務全般
すなわち外国人による運転業務が可能ということです。しかし、運転業務といっても様々な付随業務があり、運転しかできないと不都合があります。そこで、以下のようにも定められています。
「当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:車両の清掃など試験等によって専門性を確認されない業務)に付随的に従事することは差し支えない」
参照先:自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領
雇用形態
自動車運送業分野の運用方針によると、直接雇用に限るとされています。
すなわち、受入先と外国人が直接雇用契約を結ぶ必要があり、派遣社員や請負社員は対象外になります。
人材の基準
特定技能外国人の一般要件とは別に、自動車運送業分野については以下の要件が追加されています。
参照先:
自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針『自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針』に係る運用要領
トラック運転業務
タクシー運転業務
バス運転業務
特定技能所属機関に対する追加要件
特定技能ビザでは、申請者側だけでなく、特定技能外国人の受入機関側にも様々な要件が課されています。この受入機関のことを、特定技能所属機関といいます。
ここでは、全分野に共通する受入機関側の要件を省略させて頂き、自動車運送業分野の場合に特に課されている要件について説明していきたいと思います。
(特定技能所属機関側の一般要件(全分野共通)等につきましては、こちらのブログをご覧ください。)
自動車運送業分野の運用指針では、「特定技能所属機関に対して特に課す条件」として、以下の内容を定めています。
- 国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」の構成員になること。
- 協議会に対し必要な協力を行うこと。
- 国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと。
- 道路運送法第2条第2項に規定する自動車運送事業(第二種貨物利用運送事業を含む。)を経営する者であること。
- 一般財団法人日本海事協会が実施する運転者職場環境良好度認証制度に基づく認証を受けた者又は全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が認定する安全性優良事業所を有する者であること。
- タクシー運送業及びバス運送業における特定技能所属機関は、特定技能1号の在留資格で受け入れる予定の外国人に対し、新任運転者研修を実施すること。
- 登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、協議会の構成員となっており、かつ、国土交通省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に委託すること。
運転業務開始までの流れ(海外在住の場合)
最後に、実際に外国人が日本に入国し、運転手として働く場合のおおまかな流れについてご説明いたします。
外国人側の手続きの流れ
トラック運転業務
(国土交通省「特定技能Q&A」参照)
タクシー・バス運転業務
(国土交通省「特定技能Q&A」参照)
会社側の手続きの流れ(トラック、タクシー、バス)
全日本トラック協会「自動車運送業分野 トラック区分における特定技能外国人の受け入れの手引き」参照
まとめ
日本の生活を豊かにしてきた自動車運送業ですが、残念ながら少子高齢化等により運転手の人手不足は進んでいます。少子高齢化の中、女性や高齢者の雇用も奨励されていますが、自動車運送業の分野では難しく、外国人運転手の活躍が期待されています。日本で運転手になりたいという方は、ぜひ特定技能ビザをご検討されてみはいかがでしょうか。
但し、特定技能ビザは一般要件や分野別の要件等、内容が複雑になっています。ご自身が特定技能ビザの対象となりうるか分からないという外国人の方、特定技能外国人の受け入れにご興味のある会社様はぜひお気軽にお問合せください。
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この記事の監修者

- 柳本 良太
- 行政書士・司法書士
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。
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