帰化申請
簡易帰化の適応要件
- 2024.06.14
「簡易帰化」とは、日本国籍を取得しようとする特定の条件を満たす外国人に対し、通常の帰化手続きよりも簡便に帰化申請を可能とする制度です。このブログでは、帰化申請の種類やそれぞれの相違点・簡易帰化の適応要件について分かりやすく解説します。
簡易帰化とは
「簡易帰化」とは、日本の国籍法に基づき、一般的な帰化手続きよりも簡便な条件で日本国籍を取得できる特別な制度です。
これは特定の条件を満たす外国人に適用されるもので、一般的な帰化手続きに比べて居住期間やその他の要件が緩和されています。
※すべての要件が緩和されるわけではありません。
帰化の種類
国籍法の第4条から第10条で、普通帰化、簡易帰化、大帰化の3つに分類されております。
【1】普通帰化:
一般的な帰化手続き
【2】簡易帰化:
一定条件を満たした場合、「普通帰化」審査要件の内の一部が緩和される帰化申請手続き
【3】大帰化:
特別に功労があった外国人を対象に、「普通帰化」審査要件のすべてが免除される帰化申請手続き
※帰化申請に関する流れ・詳しいご説明はこちらをご覧ください
では、それぞれの種類を詳しく見ていきましょう
【1】普通帰化
普通帰化とは、文字通りになりますが、国籍法に規定された通りの一般要件をすべてクリアして申請する通常の帰化申請を指します。
具体的な要件は以下の通りです。
※国籍法第五条に規定する要件以外に、日本語能力(小学3年生レベル)が必要です。
国籍法第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。 一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。 二 十八歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。 三 素行が善良であること。 四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。 五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。 六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。 |
【2】簡易帰化
簡易帰化は、特定の条件を満たした場合には、国籍法第五条に要求される住所要件、能力要件及び生計要件など、普通帰化の要件をすべてクリアしなくても帰化申請が可能となる制度のことをいいます。
緩和の適応基準は、下記通りです。
国籍法第六条 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの 二 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの 三 引き続き十年以上日本に居所を有する者
|
こちらの簡易帰化に該当する方の多くは、特別永住者の方や日本人と結婚している外国人の方です。
実際にどのような場合に、簡易帰化に該当し、どの要件が緩和されるのかを、条文を分解して見ていきましょう。
<居住要件が緩和される場合>
①日本人であった方の子どもの場合
国籍法第六条 一 日本国民であった者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの |
元日本人である親の子供がこれにあたります。
元日本人とは、例えば、日本人が、外国の国籍を取得した場合、原則として日本は二重国籍を認めていませんので、日本国籍を失うことになります。
普通帰化の居住要件である「引き続き五年以上日本に住所を有する」 が、 「引き続き三年以上日本に住所又は居所を有する」に緩和されます。
※住所と居所の違いについて:住所とは日本で生活の本拠です。一方で居所とは、生活の本拠ではないものの、一定期間を継続して滞在する場所をいいます。
②本人または親が日本で生まれた場合
国籍法第六条 二 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの |
外国籍の方であっても、日本で生まれていた場合には、居住要件が緩和される可能性があります。
また、日本で生まれて、一旦日本に離れたとしても、日本に戻って継続的に3年以上(本来は5年以上)住んでいれば、この居住要件を満たします。
※住所と居所の違いについて:住所とは日本で生活の本拠です。一方で居所とは、生活の本拠ではないものの、一定期間を継続して滞在する場所をいいます。
ただし、能力要件は緩和されませんので、日本で生まれ、3年以上「居所」を有しているとしても、18歳以上でなければ帰化は許可されません。つまり、日本で生まれて3歳になっても帰化は許可されないということになります。
また、「日本で生まれた者でその父若しくは母が日本で生まれたもの」とは、日系3世のこと指します。こういった方は、引き続き三年以上でなくても、日本に住所を有するだけで、この居住要件を満たすことになります。
③日本に居所がある方
国籍法第六条 三 引き続き十年以上日本に居所を有する者 |
居所を引き続き10年以上有していれば居住要件を満たすことになります。つまり、「引き続き10年以上日本に居所を有する者」は、「引き続き5年以上日本に住所を有すること」という普通帰化の要件が不要とされます。
在日留学生や特別永住者等がこの情況に該当するケースが多いです。
ただし、これにより緩和されるのは、あくまで住所要件のみですので、引き続き10年以上日本に住んでいても、在日留学生や特別永住者 等で、日本での収入がアルバイト程度で不安定な場合には、生計要件を満たさない可能性があり、認められないケースがあります。
(※ただし、生計要件は「配偶者その他の親族の資産等」も考慮されます)
※住所と居所の違いについて:住所とは日本で生活の本拠です。一方で居所とは、生活の本拠ではないものの、一定期間を継続して滞在する場所をいいます。
<住所要件及び能力要件が緩和される場合>
①日本人の配偶者である方
国籍法第七条 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。 |
ここのポイントは、日本人との婚姻期間が必ずしも3年以上である必要がないところです。
要約しますと、該当するケースは以下通りです。
・日本で3年以上を滞在した外国人が日本人と結婚した場合
・日本人と結婚して3年が経ち、日本で継続して1年以上一緒に生活した場合
<住所要件、能力要件、生計要件が緩和される場合>
今までは、住所要件の緩和(1つの要件の緩和)、住所要件及び能力要件の緩和(2つの要件の緩和)を紹介してきましたが、実はさらに、住所要件・能力要件・生計要件の3要件が緩和される場合があります。それは、国籍法第八条に該当する場合です。
国籍法 第八条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。 |
では、条文を分解して説明していきます。
①日本人の子ども
国籍法 第八条 |
記述そのままになりますが、父又は母のどちらかが、先に日本国籍に帰化をして,その後子が帰化許可申請をする場合、外国人と結婚した日本人の子が日本で居住しはじめた場合などがこれに該当します。
②連れ子(外国人側)
国籍法 第八条 二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの |
よくあるケースととしては、日本人と再婚した外国人側の連れ子で、その子供が日本人と未成年の間に、養子縁組を組んだ場合が該当します。
③日本国籍を喪失した方
国籍法 第八条 三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの |
「日本の国籍を失った者」とは、例えば、生まれながらの日本人が、外国人と結婚し、外国籍を取得したことにより日本国籍を失った者のことをいいます。
このような元日本人が再び日本国籍を取得する場合は、「住所要件」「能力要件」「生計要件」が不要となります。
ただし、実務上は、来日後少なくとも半年程度が経過してから帰化申請が受付られるケースが多いようです。
※なお、日本に一度帰化した外国人が、日本国籍を失った場合はこれに該当しません。
④日本で生まれた無国籍の子ども
国籍法 第八条 四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの |
日本で生まれ、無国籍の状態であった方が3年以上日本に住所を有し、住んでいた方が該当します。
【3】大帰化とは
大帰化(だいきか)は、冒頭でお伝えした通り、日本において特別な事情に基づいて、特に日本に対して特別な貢献をしたり、特別な事情がある外国人に対して適用し、通常の帰化手続きとは異なる方法で国籍を取得することを指します。
国籍法第九条
日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。
|
条文でわかりますように、国籍法5条の帰化要件を満たさなくても、法務大臣が国会の証人を得て、その帰化を許可される特例になります。
※大帰化を申請するための申請書は存在しておりません。
普通帰化・簡易帰化・大帰化の違い
これまで紹介してきた3種類の帰化申請について、基準の違いが分かる比較図は下記通りです。
帰化の種類 |
審査要件 |
---|---|
普通帰化 |
①住居要件 引き続き5年以上日本に住所を有すること ②能力要件 18歳以上で本国法によって能力を有すること ③素行要件 素行が善良であること ④生計要件 自己または生計を一にする配偶者その他の親族の資産または技能によって生計を営むことができること ⑤喪失要件 国籍を有せず、または日本の国籍の取得によって元の国籍を失うべきこと ⑥思想要件 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、もしくは主張し、またはこれを企て、もしくは主張する政党その他の団体を結成し、もしくはこれに加入したことがないこと(国籍法第五条) ⑦日本語能力 読み書きができること(おおよそ小学生3年生レベル) |
簡易帰化 |
ⅰ. ①住居要件の緩和(一つの要件の緩和)
ⅱ. ①住所要件 + ②能力要件の緩和(二つの要件の緩和)
ⅲ. ①住居要件 + ②能力要件+ ④生計要件の緩和(三つの要件緩の和)
上記ⅰ、ⅱ、ⅲのいずれかの場合
+
その他、緩和対象外要件を満たすこと
|
大帰化 |
国籍法第五条の要件に満たさなくても帰化可能 |
最後に
いかがでしょうか?
今回は、普通帰化・簡易帰化・大帰化について説明しました。2024年現在で、大帰化はいまだに実例がなく、当該方法で日本国籍を取得することは難しいですが、帰化申請の要件(1つ~3つ)が緩和される「簡易帰化」に該当する方は多くおられると思います。
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この記事の監修者
- 柳本 良太
- 行政書士・司法書士
24歳のときに司法書士、行政書士、賃金業務取扱主任者の国家試験を同時合格。
大手資格予備校の専任講師をしながら、司法書士・行政書士等の法律関係の事務所を独立開業し、現在、司法書士・行政書士として、15年以上の経験を持つ。
一部上場企業不動産会社、金融機関、介護事業者や専門士業会等において、セミナーや講演・講師活動も行い、現在60講演以上の実績がある。
その他、法務省告示校の日本語学校の理事長を務め、不動産会社(外国人対応可能)の顧問を務める等、外国人関連産業において、多方面にて活躍中。
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